変動金利が上がり続け、完済も見えてきた。だからいっそ残高をまとめて返してしまおう——そう考えて調べてみると、全額繰り上げ返済には手数料がかかると分かり、一部繰り上げ返済にするか迷って、手が止まる。私自身がまさにそうでした。

完済が視界に入ってきた人ほど、こんな迷いにぶつかります。

  • 全額を返してスッキリしたいが、完済にかかる手数料が気になる
  • 一部だけ返すのと全額返すのと、どちらが得なのか分からない
  • 少しでも残高が残るのが、なんとなく気持ち悪い

住宅ローンを全額繰り上げ返済するか一部にするか迷う会社員。全額返せば金利上昇の不安や金利負担が消えて気持ちが楽になる一方、繰上げ返済手数料と団信がなくなることが気になっている

私は全額ではなく、まとまった額だけを返す「一部繰り上げ返済」を選びました。決め手になったのは、手数料まで含めた総額の比較です。残りわずかな利息のために、それを上回る完済手数料を払うのは合理的ではないと判断しました。

なぜそう言えるのか。それは、金融システムに関わるSEである私が、実際に自分のりそな銀行のローンで数字を並べて確かめたからです。本記事では、その試算の中身と、あなたが自分のローンで同じ判断をするための手順を具体的に見ていきます。

なお、本記事に出てくる手数料22,000円はりそな銀行の例であり、金額や仕組みは銀行によって異なります。ご自身の借入先で必ず確認してください。特定の銀行をおすすめする記事ではありません。

そもそも繰り上げ返済をすべきか、あるいは返済せず投資に回すべきか——という手前の議論は、別記事「繰り上げ返済と投資どっち?」で扱っています。本記事はその一歩先、「繰り上げると決めた後、全額を返すか一部だけ返すか」に絞った実例です。

この記事でわかること

  • 「全額返済」か「一部だけ返す」かを決める、たった2つの判断ポイント
  • 完済(全額繰り上げ)に手数料がかかる仕組みと、りそな銀行での実額(22,000円)
  • 残り利息と完済手数料を比べて、私が一部繰り上げ返済を選んだ実例
  • 自分のローンで同じ計算をするためのチェックリスト
  • 残高が残っても気にならなくする、口座の分け方の工夫

全額返済か一部だけか——判断の前に確認すべき2つのポイント

完済が近づいたローンで「全額返すか、一部だけ返すか」を決めるとき、見るべき数字は突き詰めると2つだけです。この先支払う利息の総額と、完済にかかる手数料です。

理由はシンプルで、繰り上げ返済のメリットは「本来払うはずだった利息を消せること」にあるからです。そのメリット(消える利息)より、完済のために払うコスト(手数料)の方が大きければ、全額返すのはかえって損になります。順番に見ていきます。

住宅ローンの全額繰り上げ返済を判断する前に確認すべき2つのポイント。①残りの利息の総額と②完済手数料を両手に載せて見比べる会社員のイラスト

①残り期間で支払う利息の総額

まず、いま全額返さなかった場合に、完済まであと何円の利息を払うのかを把握します。これが「全額繰り上げで消せる利息」の上限です。

完済間近のローンでは、この利息は驚くほど小さくなります。残高が減っているうえ、残り期間も短いためです。たとえば残高が100万円を切り、完済まで1年ほどしかないケースだと、金利1%台でも残りの利息は数千円程度にとどまることがあります。ここが「あと少しだから全部返してしまえ」という直感が、必ずしも得にならない理由です。

②完済にかかる手数料

次に、全額を繰り上げて完済する(ローンを終わらせる)ときにかかる手数料を確認します。ここで見落としがちなのが、多くの銀行で「一部繰り上げ返済」と「全額繰り上げ返済(完済)」で手数料が違うという点です。

ネットバンキング経由の一部繰り上げ返済は無料でも、全額繰り上げ(完済)には手数料がかかる銀行が少なくありません。さらに、後述するように銀行の手数料だけでなく、保証会社に払う事務手数料が別に発生するケースもあります。「完済=タダで終われる」と思い込まず、実額を必ず調べてください。

あなたは保証料型?事務手数料型?

もう一つ、完済時の損得に関わるのが、借入時の保証の付け方です。住宅ローンには大きく分けて、借入時に保証料を一括前払いする「保証料型」と、借入時に融資額に応じた手数料を払う「事務手数料型(融資手数料型)」があります(ほかに、保証料を金利に上乗せして分割で払うタイプもあります)。

住宅ローンの保証料型と事務手数料型の対比イラスト。保証料型は借入時に保証料を前払いし繰り上げ返済で一部戻る。事務手数料型は借入時に手数料を前払いし戻りはなし

保証料型で前払いした人は、繰り上げ返済で期間が短くなると、払いすぎた保証料の一部が戻ってくることがあります(事務手数料型には返還はありません)。ただし、この返還額の有無は損得の方向を変えるものではないので、まずは前述の2つのポイント(残り利息と完済手数料)で判断すれば十分です。次章の実例で、実際の数字を当てはめてみます。

【実例】2012年・りそな銀行2,500万円で試算してみた

ここからは私自身のケースです。2012年にりそな銀行で2,500万円を変動金利で借り、住宅ローン控除も10年で終わりました。完済が視界に入ったいま、実際に数字を並べて「全額か一部か」を判断しました。

金利の推移(変動金利)

私のローンは変動金利で、借入からの金利は次のように動いてきました。

時期 適用金利(変動)
借入当初 0.775%
2024年4月(金利交渉後) 0.675%
その約半年後(利上げ) 0.775%に戻る
2025年中 1.075%
2026年6月から 1.325%

2024年4月に金利引き下げ交渉をして0.675%まで下げられたものの、その約半年後の利上げ局面で押し戻され、いまは1.325%まで上がっています。金利が上がるほど「早く返してしまいたい」という気持ちは強くなりました。

※変動金利は、日銀の利上げが決まってから実際の適用金利に反映されるまで数カ月のタイムラグがあります。2026年6月からの1.325%も、同月の利上げではなく、それ以前の利上げ分が反映されたものです。

全額繰り上げ返済の手数料は22,000円

そこで、全額を繰り上げて完済した場合の手数料を調べました。りそな銀行の場合、全額繰り上げ返済(完済)にかかる費用は、銀行の手数料11,000円と保証会社の事務手数料11,000円の、合計22,000円でした(金額の出典は記事末尾)。

一方、ネットバンキング経由の一部繰り上げ返済は手数料が無料です。つまり同じ「繰り上げ返済」でも、全部返して終わらせるか、少し残して続けるかで、かかるコストが22,000円も違うということです。

なお、りそな銀行の場合、全額繰り上げ返済(完済)はインターネットでは手続きできず、店頭またはテレビ電話での手続きになります。手間の面でも、ネットで完結する一部繰り上げ返済とは差がありました。

保証料型なら保証料の一部返還もある

私の契約は保証料型で、借入時に保証料を一括で前払いしていました。この場合、繰り上げ返済で返済期間が短くなると、払いすぎた保証料の一部が戻ってくることがあります。事務手数料型にはこの返還はありません。

もっとも、この返還額は契約によって変わるうえ、全額返済でも一部返済でも「どちらが得か」の比較には直接影響しないので、今回の判断からは切り離して考えました。

残り約1年、100万円弱を残して一部繰り上げにした理由

2026年7月、まとまった資金で繰り上げ返済をすることにしました(繰り上げ返済自体は2025年にも一度実施しています)。このとき目の前にあった選択肢は2つです。

  • 全額繰り上げ返済:残高をゼロにして完済する。ただし手数料22,000円がかかる
  • 一部繰り上げ返済:まとまった額だけを返し、少額の残高を残す。手数料は無料

私が一部繰り上げを選んだ場合に残る残高は88.4万円、完済期日は2027年8月27日で残り約1年。方式は完済を早める「期間短縮型」です。ちなみに「100万円弱を残す」という金額そのものに意味はありません。きりよく百万円単位で返済した結果、たまたま残ったのがこの金額でした。

ここで、この残高を完済まで持ち切った場合の残りの利息を概算してみます。

※以下は銀行の正式な償還予定表ではなく、こちらで行った概算です。前提は「残高88.4万円・適用金利1.325%・2027年8月完済・元利均等返済」。この前提で計算すると、残り期間で支払う利息は約7,000円です。

つまり、残高を残さず全額を繰り上げて完済した場合に消せる利息は、この約7,000円だけ。それなのに、完済手数料は22,000円かかります。全額返済を選ぶと、約7,000円の利息を消すために22,000円を払う=差し引き約15,000円の持ち出しになる計算です。

だから私は、全額ではなく一部繰り上げ返済を選びました。手数料はゼロ、残りの利息もわずか。完済まで持ち切っても、22,000円を払って早く終わらせるより得だと判断したわけです。

筆者の実例での費用対比。全額繰り上げ返済は完済手数料22,000円で合計22,000円、一部繰り上げ返済は手数料0円と残りの利息約7,000円で合計約7,000円。その差約15,000円で筆者は一部繰り上げ返済を選択

団信について

一つ補足すると、ローンを残すと団体信用生命保険(団信)も残ります。返済してしまえば団信の保障はなくなりますが、私は預貯金の増加・遺族年金・その他加入している保険・勤務先からの支給・現在の資産額をひととおり確認しました。そのうえで、団信がなくなっても遺された家族の生活は成り立つとシミュレーションできたため、残高を残す判断をしています。

逆に「団信がなくなると保障が足りない」という場合でも、足りない分だけ掛け捨ての生命保険で補うという考え方があります。繰り上げ返済で軽くなる利息と保険料を見比べて、保険料の方が安ければ「繰り上げ返済+掛け捨て保険」という組み合わせも選択肢になります。我が家でも繰り上げ返済にあたって、この比較は検討しました。ここは家庭ごとに事情が違うので、各自で確認してほしい点です。

団信の傘が薄れても、預貯金・遺族年金・保険・会社からの支給という4本の傘が家族を守っているかを確認する会社員のイラスト。足りない分は掛け捨て保険で補う選択肢も

そして今回の判断にあたっては、配偶者とも話し合い、この資金は投資に回すのではなく返済に充てることにしました。投資と返済のどちらを取るかという判断軸そのものは、別記事「繰り上げ返済と投資どっち?配当で住宅ローンを賄えるか金融SEが試算」で整理しています。

自分の数字で計算してみる(チェックリスト)

ここまでは私の実例でしたが、同じ判断はあなた自身のローンでもできます。特別なツールは要りません。必要なのは次の5項目で、いずれも銀行の情報から確認できます。

  • 現在のローン残高:ネットバンキングの残高照会で分かります
  • 適用中の金利:変動金利なら現在の適用金利。半年ごとに見直されるので最新の数字を確認します
  • 返済予定表(償還予定表):契約時にもらった書類か、ネットバンキングで確認できます。完済期日と、残り期間に払う利息の合計がここで分かります
  • 全額繰り上げ返済(完済)の手数料:契約書に記載されているほか、銀行公式サイトの手数料一覧でも調べられます。一部繰り上げと金額が違うことが多く、保証会社の事務手数料が別途かかる場合もあります
  • 保証料の返還の有無と扱い:これも契約内容の一部です。契約書や公式サイトで、自分の契約が保証料型か事務手数料型かを確認します。返還がある場合でも判断の方向は変わりませんが、気になるなら見ておくと安心です

ネットバンキングのパソコン、契約書、公式サイトを開いたスマートフォンを机に並べ、確認リストを手に必要な数字をチェックする会社員のイラスト

返済予定表があれば、残り利息の合計はそのまま読み取れます。手元になければ、前述のように「残高×金利×残り期間」でおおまかな概算はできます。

手数料や保証料の扱いは、本来どれも契約書に書かれている内容です。まずは契約書と銀行公式サイトで調べ、読み取りに不安が残る場合や「完済時に総額でいくらかかるか」を確定させたい場合に、念のため電話や窓口で銀行に確認する——という順番で十分です。

この5項目がそろえば、「消せる利息」と「完済手数料」を並べて、全額か一部かを自分で判断できます。

残高を「気にしない」ためにやったこと——別口座管理

「損得では一部繰り上げが正しくても、残高が残るのが気持ち悪い」——この感覚は私にもよく分かります。そこで役立ったのが、口座を分けて管理する工夫です。

私にとって、りそな銀行はメインバンクではなく住宅ローン専用の口座という位置づけです。ローン返済用の資金を普通預金に置いているだけなので、頭の中で「りそなの残高=住宅ローン関連」と切り離して考えられます。日常の家計やメインの資産とは別勘定にしておくイメージです。

ふだんの家計と住宅ローン専用口座を点線で仕切って分け、頭の中で切り離してふだんの暮らしを楽しむ会社員のイラスト

正直に言うと、残高が大きいうちは多少気になりました。ただ、残高が100万円レベルまで減ってしまえば、ほとんど気になりません。「あと少しで終わる、専用口座の中の話」と割り切れるからです。金額の大小で心理的な負担は変わります。残高が減った段階なら、無理に手数料を払って完済しなくても気持ちよく持ち切れると感じています。

まとめ

金利上昇の中で「全額返してスッキリしたい」と思ったとき、それでも私が一部繰り上げ返済を選んだ理由を、実例で見てきました。要点は次の通りです。

  • 判断に必要な数字は2つだけ。この先払う利息の総額と、完済にかかる手数料
  • 私のケースでは、残り利息の概算は約7,000円前後。対して全額繰り上げ(完済)の手数料は22,000円(りそな銀行の例)
  • 約7,000円の利息を消すために22,000円払うのは損。だから100万円弱を残して一部繰り上げ返済にした
  • 残高が残る気持ち悪さは、ローン専用口座に分けて「切り離す」ことで和らげられる

完済間近のローンほど、残る利息は小さく、全額返済の手数料が相対的に重くなります。まずは自分の返済予定表を開いて「残り利息の合計」を確認してください。そのうえで契約書や借入先の公式サイトで「全額繰り上げ(完済)の手数料は総額いくらか」を調べてみてください。この2つを並べるだけで、全額か一部かの答えは見えてきます。

ご自身のライフプランに合わせて判断してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 一部繰り上げ返済と全額繰り上げ返済、どちらが得ですか?

ケースによります。判断の基準は「全額返済で消せる利息」と「完済にかかる手数料」の比較です。完済間近で残り利息が手数料より小さいなら、全額返さず一部繰り上げにした方が得になります。筆者の例では残り利息が約7,000円、完済手数料が22,000円だったため、一部繰り上げを選びました。

Q. 繰り上げ返済の手数料はいくらですか?

銀行や返済方法で異なります。ネットバンキング経由の一部繰り上げ返済は無料の銀行が多い一方、全額繰り上げ(完済)には手数料がかかることがあります。筆者のりそな銀行の例では、銀行の手数料11,000円と保証会社の事務手数料11,000円で合計22,000円でした。必ずご自身の借入先で確認してください。

Q. 保証料は繰り上げ返済で戻ってきますか?

契約が保証料型(借入時に保証料を一括前払い)なら、繰り上げ返済で期間が短くなると保証料の一部が返還されることがあります。事務手数料型には返還はありません。返還額は契約により異なりますが、「全額か一部か」の損得比較には直接影響しないため、まずは残り利息と完済手数料で判断すれば十分です。

Q. 全額返済すると団信(団体信用生命保険)はどうなりますか?

ローンを完済すると団信の保障もなくなります。残高を残すか完済するかは、預貯金・遺族年金・他の保険・資産額などを確認し、団信がなくなっても家族の生活が成り立つかを見て判断するのがおすすめです。保障が足りない場合は、足りない分を掛け捨ての生命保険で補い、繰り上げ返済で軽くなる利息と保険料を比較する方法もあります。家庭ごとに事情が違うため、一律の正解はありません。

Q. 残り期間の利息はどうやって計算しますか?

正確には銀行の返済予定表(償還予定表)で確認できます。手元になければ「残高×金利×残り期間」でおおまかな概算が可能です。筆者の例では、残高88.4万円・金利1.325%・完済まで約1年(元利均等)の前提で、残り利息は約7,000円という概算になりました。

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参考文献・出典